2012年3月30日金曜日

地球温暖化問題その8:京都議定書の正体


地球温暖化問題
その8:京都議定書の正体

前回はちょっと難しい話になってしまいました。「難しすぎてつまんなかったよ」という方、ごめんなさい。筋道立てて経緯を説明しようとするとああいうふうになってしまいました。今回は出来るだけ簡単になるようにしますね。

さて、すったもんだのあげくに調印された京都議定書ですが、そもそもどんな内容なんでしょうか?超簡単にまとめると、二酸化炭素を減らす目標とその方法が定められています。

 

削減目標をめぐる議論

京都議定書に定められている削減目標の話に入る前に、いったいどれくらいの二酸化炭素排出量を減らせば地球温暖化を食い止めることが出来るのかについて知っておくと便利です。その3で紹介したカーボンサイクルなどの分析によると、「排出量を今すぐに50〜70%削減し、その後も削減の努力を続ける」ことが必要なのだそうです(IPCCレポート)。これでようやく、二酸化炭素の濃度を一定に保つことが出来るようになります。つまりこれだけ劇的に削減したとしても、二酸化炭素濃度は下がってくれないわけです。


アメリカの家庭の何パーセントが共働きです。

ここで、京都議定書に定められている削減目標を見てみましょう。下の表は先進国に分類された各国の削減目標値です。ちょっと解りにくいですが、1990年時点での排出量が基準になっています。つまり、日本の場合は1990年の二酸化炭素排出量の6%に相当する量を削減しなければいけないということになります(目標年限は2008〜2012年)。ちなみに先進国全体での削減目標値は5.2%です。52%じゃないですよ、5.2%です。50〜70%の削減が必要って時にたったの5.2%ぽっきりです。本当に地球温暖化を食い止める気があるのかという話です。しかしながら、京都議定書の段階ではこれが各国が許容できるギリギリの目標値だったと言うことなのです。当然、削減目標は多ければ� ��いほど「地球温暖化問題にとっては」望ましいのですが、逆に先進国の経済にはマイナスの影響を与えてしまいます。なので先進国としては出来るだけ自国の削減目標を低めに設定し、他国にその負担をなすりつけたいというのがホンネです。これが京都議定書の成立を難しくしていた第一の原因です。


スタンドリッジは何ですか
国名 削減目標
(1990年の排出量を基準)
EU15ヶ国、チェコ、エストニア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、モナコ、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スイス -8%
アメリカ -7%
日本、カナダ、ハンガリー、ポーランド -6%
クロアチア -5%
ニュージーランド、ロシア、ウクライナ 0
ノルウェー +1%
オーストリア +8%
アイスランド +10%

【出典】A Guide to the Climate Change Convention and its Kyoto Protocol(表自作)


何がアイルランドの農民の面でデカップリングされてい

さらに、前回も説明したように、発展途上国には削減目標そのものが設定されていません。「なんで俺たちばっかり・・・」という感情が先進国(特にアメリカ)の態度を硬化させてしまったのは致し方のないところです。発展途上国の取り扱いについては現在も議論が続いています。

 

減らし方をめぐる議論

二酸化炭素の排出量を6%減らすって、別に何でもないことのような気がしませんか?でも、さにあらずです。私が排出する二酸化炭素を6%減らすのは、呼吸の回数を1分間60回から56回に減らすだけのことなので、訓練次第で何とかなるかも知れません。が、これが国全体で、ということになるととたんに難しくなります。国ごとの大まかな削減目標を決めるのですらすったもんだしたんですから、自国内で誰がどれだけ減らすべきなのかという議論になるとこれまた膨大な労力と時間を費やすことになります。

そこで、先進国側から持ち出されたのが、京都メカニズムと呼ばれるイカサマ画期的な方法です。京都メカニズムは主に3つの手法から成り立っています。


(1) 共同実施(Joint Implementation)
先進国同士の間で、協力して排出量を減らしていいというシステムです。例えば、二酸化炭素をたくさん排出する古い石炭発電所を新しい天然ガス発電所に建て替えるとします。これを日本でやると莫大な費用がかかりますが、たとえば先進国の中でも経済の発展が遅れている東欧諸国などでこれをやれば比較的少ない予算で同じことが出来ます。こういうプロジェクトに対してもしも日本が費用を出してあげれば、それは日本の削減量としてカウントしてもいいという仕組みです。

(2) クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)
基本的には共同実施と同じことなんですが、これは発展途上国を対象としたものです。例えば、発展途上国に森林をたくさん植えるというプロジェクトに対して先進国がお金を出した場合、それは先進国の削減量としてカウントできるというものです。

(3) 排出権取引(Emission Trading)
ある先進国が削減目標に達することが出来そうにない場合、削減目標をクリアして余裕のある国から排出権を買い取ることが出来るというシステムです。例えば、日本が6%の目標に対して8%の削減を実現できた場合、余分に削減した2%分は他の国に売ることが出来るというわけです。

一見、どのメカニズムも賢い方法に見えますが、実際にこれらのシステムを運用するとなると大変です。目に見えない二酸化炭素の排出権を国同士でやりとりしようというのですから、どちらも納得のいく取引をするのがこれまた難儀なことになるのは容易に想像がつきます。


また、森林を植えることも二酸化炭素の「排出量」削減に含むことが出来るようになっていますが、1本の木が何キロの二酸化炭素の削減につながるのか、まだ具体的には解っていません。したがって、発展途上国に木を植えまくったあげくに自分の国では何の対策もせず、削減目標をクリアしたと言い張る国が出てこないともかぎりません。さらにそれによって浮いた排出権を他国に売りさばいて儲けようという国も出てくる可能性もあります。

ほかにも、目標値がクリアできなかった場合の罰則をどうするのか、など、京都議定書はまだまだたくさんの問題点を抱えています。これらの問題を解決していかない限り、二酸化炭素の排出量を目標通りに減らしていくことは困難でしょう。まだ地球温暖化に対する取り組みは始まったばかりなのです。


その9:京都議定書温度計へ

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